地震で壊れなかった日本人による建物

森 靖之です。
 新宿花園神社の宮司片山文彦氏の意見の引用ですが、昭和42年ウズベキスタン、タシュケントの大地震の際、建物の9割が崩壊したが、ソ連に抑留された日本人捕虜の手で昭和22年に完成した、ナボイ・オペラ劇場だけは無傷で残ったという。片山氏は、戦前の教育では、神様がいつでも見ているとの意識が子供の頃から植付けられていたのではないかといわれる。
 抑留という身で、しかも異国地の劇場を手抜くことなく作り上げた技師の心意気に私は感じ入る。
 また最近の姉歯事件で提起されたものは、単に個人の倫理問題ではなくシステム、仕組みの問題であろうが、そのような背景に、戦前の物作りにかける意気込みと近年の拝金主義的浮ついた風潮との違いを感じる。
 専門家の倫理も結局このような人間としての倫理に戻るものではないだろうか。問題はこのような職人気質や物つくりの専門家の誠実さを、社会が評価できるかどうかである。マネーゲームとしかいえないような、相場や違法すれすれの操作による成金に若者があこがれる社会はどう見ても健全ではない。そのような社会で、専門家だけが倫理倫理と攻められてはしらけてしまう。
 学校でも家庭でも、子供達に人として倫理教育をしっかりやって、社会の風潮をまっとうなものにし、健全な社会にしたいものである。そのとき初めて専門家の倫理教育も地に足がついたものになるだろう。

新年号特集「社会資本整備におけるコンプライアンスとは」は目から鱗と新たな課題

 新年号「社会資本整備におけるコンプライアンスとは」(学習院大法学部教授櫻井敬子)を読んで
 【談合はなぜ悪いのか】「関連する企業・事業者がそれぞれの技術力を持ち寄って協力し合い、事業を分担したうえで能力に応じて工事を受け持つことは、ごく自然な成り行きであり、合理的な対応ですらあって、特別非難を受けるような実質的違法性は存しないないようにもみえる。受注額についても、一定の利潤を確保するために「話し合い」が行われ、一定額を上乗せした額がセットされた場合、確かに上乗せ分は「ムダ」な支出であり、国民の血税は1円のムダも許されないはず・・・というのは少々形式論に傾いており、いまひとつ説得力がないように感じるのは、おそらく筆者だけでないであろう。」・・・・「価格の上乗せといっても、彼らなりの「常識」の範囲でなされるものであり、破格の上乗せがなされるような自体は通常生じない。」・・・・「談合は、伝統的な一種の利益再配分の形態ともいえるるから、実態に踏み込んで仔細に省察すればするほど、談合がなぜ悪いことなのか、かえって説明が困難になる。」
 現代の社会では、企業であるからには、倫理に則った企業活動によって、適正な利潤を確保するのは当然である。ここで問題なのは「一定の利潤」「上乗せした額」「価格の上乗せ」(上乗せというのは材料費や下請け額に元請の業務に対する当然の対価をプラスするということ)が、納税者である国民、一般社会に合意できる常識の利潤の範囲か、通常の民間対民間、民間対個人の消費における契約のそれより不当に「破格の上乗せ」なのか、という問題である。前者であれば非難されることが全くない。後者であればコンプライアンス違反、非倫理となる。どっちなのかが社会一般に知らされないまま、分からないままにきたことが、談合は、
 【ゲーム・ルールとしのコンプライアンス】「今や、およそまっとうな企業たらんとする者は、絶対やってはいけない「禁じ手」と心得るべき」
 ものになってしまった。非倫理である後者のイメージが国民に植え付けられてしまった。通常の常識以上の上乗せがあったとして、その余り金がパーティ券購入という献金となり、政治屋がそれに群がる構造ができているのではないか、というものである。これは証拠があるわけではないので、分からないことであるが、国民にとってはさもあらんというアナロジーは捨てがたいのである。というわけで、
 「談合は、公正な市場ルールを破る行為として、それをやったらゲームが成り立たないゆえに許されないのであり、ルール破りが追放処分を免れないのは理の当然である。」
 我々は、そういうルールの時代になっているということを、理屈抜きに認めなければならないのである。そこでここまでは納得しよう。納得することが倫理でもある。
 【NPM導入の意味合い】
 しかし、ここで重要な課題が生じている。氏は字数の制限のためか、触れてはいないが、「血税は1円のムダも許されない」というかけ声で「安ければよい」では、国民の重要な財産としての社会資本の品質が保てなくなるという問題である。低価格入札、ひどいものは積算額(予定価格で通常の経済ベース)の30%で落札しているものもある。これではまともな仕事はできるはずがない。品質確保法が施行されたが、それでも「安ければよい」というのが横行している。社会資本は将来の世代の人々まで享受するものであり、このまま推移すれば、そういう国民大衆の安全が守られるのだろうか。公共投資ではないが、姉歯建築構造計算捏造事件が社会問題となっている。「安く、もっと安く」という圧力が、技術者術者倫理を反故にし犯罪を犯させてしまう今の時代風潮。NPMが導入され、競争は良いことだという新自由主義によって、姉歯事件のようなことが社会資本で生じないだろうか。建築も広い意味では社会資本ではある。最後の負担は国民がかぶることになる。適正な価格で事業を行い耐久性ある高品質の社会資本を将来の世代に残す責務が現代人にあるはずであるが、これでは、社会資本の整備と維持保全という誇りを持ち倫理に則った業務を行っている技術者はいったいどうすればよいのだろうか。建設産業の需要と供給のバランスが崩れているだけだと、経済学者は言うかも知れない。そのうちに技術力のない者が淘汰されて、価格も適正になると言うであろう。しかしその間に建設された社会資本の品質はどうなってもよいというのだろうか。
 
 

今回の建築士の問題は激しい競争が原因

 今回の建築士の問題について、森靖之さんのコメント御心配は誠に同感です。
 一部のマスコミでも論評していますが、私は、この事件の背景には、やはり「業界」の中の激しい競争があるのではないかと思います。噂によれば、この業界では、激しい競争の結果、本来の価格の5割以下で「取る」というような事が行われているそうです。
 そうなれば、結局、どこかにしわ寄せされることになり、建築士も、そのような圧力の中で、どの程度「筋を通せるか」は難しいところだと思います。
 土木の世界でも、同様の事は起こりうる、いや、起こっているのかもしれません。その時、土木技術者として本当に間違いない対応ができるかどうか?如何でしょうか。

違反建築は設計施工一貫発注が原因か?

森靖之です。
 今回の建築確認にかかる建築士の言動にはびっくりしたが、友人の建築家の意見によれば、
「今回のように販売に関わる開発業者は販売価格を抑えるために、建設費を
抑えるよう施工者に圧力をかける。→施工者は一般ユーザーから見えない部分や躯体構造をより安価にするためにあらゆる努力をする。設計施工だと、構造躯体の詳細情報はほとんど購入者に知らされないので、何が行われているか知る由も無い。
 本来、設計図面通りの施工が正しくなされているかを、チェックするのが建築家の役割であり社会的責任なのに、いかに工事費の削減に協力する者を良しとする社会風潮があるのも事実。合理的経済設計は良しとしても、利害を異にする設計と施工は分離発注しないと設計者は追い詰められる。
 欧米では設計施工分離が常識であるが、日本独自の設計と施工を一貫して行う総合請負方式が今回の事件の底辺にあるのかも知れない。今後の調査が解明することになろう。」とのこと。

 土木にあっても、コスト第一主義の風潮や、設計施工一貫方式が安いという主張に疑問を投げかけるものであり、考えさせられる。

一級建築士の倫理観

森靖之です。
 耐震設計偽造のニュースにはビックリした方が多いと思う。
 産経新聞11月19日付けによれば、当該一級建築士は、「仕事をこなすのに頭がいっぱいで、悪いことをやっているとの認識はなく・・・」とのべ、また改ざんについて、「一番スピードを求めたら偽造になるんじゃないか」とまるで偽造は効率化の手段のような認識である。
 万が一地震が来て倒壊したら多くの人命財産にかかる事項なのに丸でその認識がない。
もちろん、法令違反であるが、専門家としての倫理観の無さにはあきれるばかりである。
 残念ながら、中にはこの程度の一級建築士もいる事を前提に、我々の自宅の建設を考える必要がということであろうか?
 振り返って土木の専門家にあっても、他山の石として、自らの業務に関して倫理観の向上に努めて行くべきということかもしれない。

片側1車線で暫定通行できないのか

山陽自動車道の岩国ー玖珂間が1ヶ月余不通で、国道2号線の渋滞もあり不便を強いられている。
テレビを観たかぎりでは上り線はほぼ残っている。
下り線に応急の補強工事をして、上り線を上りと下りに分割して、不通箇所を一車線づつの通行にできないのか。そうすれば岩国ー玖珂間は渋滞はするであろうが、通行はできるのではないか。
崩落の原因を究明しての恒久対策は併行して進めればよい。ここ数ヶ月は大雨は降らない(台風が来ない前提で)と思われるので応急処置で通行は再開できると考えるがいかなものであろうか。

ハリケーン・カトリーナ災害に対するASCEの対応

今回、米国南部にて大きな被害を起こしたハリケーン・カトリーナに対して、米国連邦政府の対応の遅れについて非難が出ています。そのような中、ASCE (米国土木学会: American Society of Civil Engineers)は、その専門性をもっての復興・復旧支援活動を行う、また、同時にRed Crossのほかに、米国連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency,FEMA)等の活動を応援する、など、被害対応を活発に行っている様子です。

活動の概要:

1.現地の復興支援をする義援金を出す
2.ASCEの費用にて、(多額の金額$50,000)、現地へ調査団を派遣する
3.ASCE支部からの現地へ義援金や技術者を送る
4.メディアや一般からの問い合わせ対応と、メディアを通じて、ASCEメンバーエンジニアの
  コメントや現地での活動を報じる
5.ASCE若手メンバーが、現地支部と協力しして、復興、復旧作業の手伝いをする。
  *寄付金をもって、救援物資や復旧工事に必要な材料やを調達、現場への発送を行う
6.被害にあったASCEメンバーの会員費免除
7.被害にあったASCEメンバーの就職の支援
8.被害にあった学生の、一時的受け入れ先大学の案内
9.被災者のための、就職、学校、家、また利用できるオフィスの案内
10.ハリケーン被害に関する、土木技術の文献の紹介
11.カトリーナ襲撃の後、ASCEとTISP (the Infrastructure Security Partnership)
とラウンドテーブルを持つ
  *NGOを加え、どのように被災地の復旧・復興を土木、デザイン、工事の面からするべきか
   検討した。

詳細は、下記アドレスにてご覧になれます。

http://www.asce.org/static/hurricane/index.cfm

そちらには、Red Cross, FEMAへの連絡先も載っておりますので、活動にご興味をお持ちの方は、アクセスされることをお勧めします。

山陽自動車道盛土崩壊

 台風14号の降雨により山陽自動車道岩国付近の盛土が崩壊し、盛土下の人家に大きな被害をだしました。被災された方々には心からお見舞い申し上げます。
 ところで、当該部分の道路構造はどのようになっていたのでしょうか?
 片切片盛の盛土部分の崩壊?(TVでは南側の車線部が崩壊したように見受けられます。) 全盛土?(盛土高さはかなり高いよう見られましたが?m程度なのでしょうか?)
 盛土本体への雨水の浸透防止策は?(張り芝程度?)
 道路表流水の排水が集中したのか?
 等々
 新聞等では考えられない現象と表現されていましたが、盛土部分では種々の条件が重なれば当然発生しうる事と思いますが?

ハリケーン「カトリーナ」に対する土木学会の対応は

アメリカで発生したハリケーン「カトリーナ」への災害援助等について、土木学会として行動することはないのでしょうか。
Topページを拝見した際、「カトリーナ」に関する記述がなかったので、投稿致しました。
日本は地震大国であると共に、水害大国でもあります。
災害に関しては、医療、治安等、さまざまな側面からの支援が必要だと思いますが、我々土木的側面からの支援・援助について何か情報があれば教えて頂きたく投稿したものです。
アメリカ合衆国政府が今回の災害について、当初自国で対応するつもりでいたこと。
日本は衆議院選挙の報道に隠れてしまい、カトリーナに関する報道が見送られてしまったこと。
これらの要因が、日本政府の行動を遅らせてしまったような気もします。
今年年末に発生した、東南アジア地域での津波への対応では、日本は大いに世界に認められました。
もし、何かしらの対応を行うのであれば、教えて頂きたく思います。